突然ですが
クイズです!
【第1問】
中学生の子供が学校の
美術の授業でアクリル絵の具を
ワイシャツに付けて帰ってきました。
お母さんのあなたは次のうちどの方法で
汚れを落とすべきでしょう。
①水洗い
②除光液
③テレピン
④ストリッパー
続いて第2問!
【第2問】
木炭デッサンまたは鉛筆デッサンが終わった後
画面を保護するために吹きかける
エアーゾルタイプの樹脂スプレーは
フィクサチーフですが…
フィクサチーフをかけた後のデッサンを
保護するために表面にかぶせておく薄紙は
なんという名前でしょうか?
続いて第3問!
【第3問】
油絵の塗膜の上に
アクリル絵の具を塗ったら
どうなるでしょうか?
続いて第4問!
【第4問】
完成後1年経った油絵の上にグレーズ技法
(溶き油が大量に混ざった色水のような
透明な絵の具を薄塗りする技法)
を施すと、画面はどう変化するでしょうか?
さてさて立て続けに絵画の
技法、材料に関する
マニアックなクイズを
出題いたしました!
気になる【解答&解説】を
ここから紹介していきます。
■■解答&解説■■
【第1問】
中学生の子供が学校の美術の授業で
アクリル絵の具を
ワイシャツに付けて帰ってきました。
お母さんのあなたは次のうちどの方法で
汚れを落とすべきでしょう。
①水洗い
②除光液
③テレピン
④ストリッパー
正解は③のテレピンです。
中学校の美術の授業で使うアクリル絵の具は
乾くと耐水性になるので、
水洗いでは落ちません…
またアクリル絵の具は
水性のメディウムで練られた
色材なので除光液でも落ちません。
(油性ペンの文字などは除光液で落ちます。)
ちょうど良いのが、油絵を希釈する揮発性の油の
テレピンなのです。
乾燥した油絵具をも溶かすストリッパーを使うと
ワイシャツの元の色まで脱色されてしまいます。
色物の服が選択中に漂白剤がくっついて
色が抜けてしまった時のような感じになります汗
【第2問】
木炭デッサンまたは鉛筆デッサンが終わった後
画面を保護するために吹きかける
エアーゾルタイプの樹脂スプレーは
フィクサチーフですが…
フィクサチーフをかけた後のデッサンを
保護するために表面にかぶせておく薄紙は
なんという名前でしょうか?
→正解は「グラシン紙」です。
グラシン紙は薄っすいトレーシングペーパー
のような紙で
文房具屋に行くと
ほぼ必ず売っています。
(大体奥にしまってあるので
店員さんに聞きましょう。)
グラシン紙をデッサンの表面に載せておくと
すれて、粉落ちする心配がありません。
これはなかなかマニアックな出題でしたね。
【第3問】
油絵の塗膜の上にアクリル絵の具を塗ったら
どうなるでしょうか?
これは油絵科出身の方以外は難しかった
かもしれません。
アクリル絵の具は基本的に「使い方」の
制限がほぼない、非常に使い勝手の良い画材
なのですが
一つだけやってはいけないことがあります。
それが油絵具の塗膜の上に塗ることです。
アクリル絵の具を油絵具の上に塗ると
次第にアクリル絵の具の塗膜がめくれ上がり
丸まったセロハンテープみたいな
チリチリのゴミみたいになります。
【第4問】
完成後1年経った
油絵の上にグレーズ技法
(溶き油が大量に混ざった色水のような
透明な絵の具を薄塗りする技法)
を施すと、画面は
どう変化するでしょうか?
これは油絵科出身の方でも
難しかったかもしれません。
完成後、半年以上たった油絵に
グレーズ技法を施すと
「ちりめんジワ」というトラブル
が起こります。
完成後時間の経った油絵の塗膜は
完全に硬化しており、
グレーズ技法で塗布する
“溶き油”を少しも吸収しません。
すると逃げ場を失った“溶き油”が
表面でクシュっと縮んでシワになります。
これはなんとレオナルドダヴィンチも
やらかしているトラブルです。
まあ言ってしまえば
「知らないと防げないトラブル」
なのです。
※ちなみにこの「ちりめんジワ」は
紙パレットやクッツカーネのような
ツルツルした紙を油絵の塗膜に押し当て
その上からアイロンをかけると
直ります。
4問とも正解できたあなたは
ぶっちゃけ技法材料ハカセと
言っても良いでしょう。
「修復家見習いレベル」と言える
かもしれません笑
絵の材料の限界にかなり詳しく
あなたの絵が劣化する
心配はほぼないでしょう。
ですが
今、これを読んでいるほとんどの
画家さんが
「そんなこと知らなかった!」
「初めて聞いた!」
「あの時のトラブルのメカニズムが
ようやくわかった!」
みたいなリアクションをとっている
ことでしょう。
こういった絵の材料の限界を
知っておかないと
せっかく描いた力作が
「汚れた紙(布)」に変わってしまう
なんて悲劇に陥るのです。
もしあなたが趣味で絵を描いている
だけなら良いですが
もし販売した絵がお客様の手元で
劣化し始めたら…
なかなか大変なことになりますよね…
実際私の知り合いの画家さんでも
アクリル画の仕上げに油性の
DIY用のニスを塗って仕上げてしまい
完成後表面が褐色に濁る
という悲劇を経験しています。
だ・か・ら
「技法材料の知識」は大事なのです。
技法材料は「職人の世界」の話なので
あれはダメ
これもダメ
みたいな非常に偏屈で
マナー講師みたいな
重箱の隅をつつくような教えも
多いですが
あなたも「作るヒト」であるならば
材料の特性、限界をまとめた
「技法材料論」というジャンルを
修めておくべきだと思います。
最後までお読みいただき
ありがとうございます。
それではまた次回まで
さようなら~